その夜、レオナールがエマのいる離れへ怒鳴り込んできた。
「貴様ッ! 昼間はよくもオレに恥を掻かせてくれたな!」 「殿下ッ……!?」 書き物机に向かっていたエマは、あわてて立ち上がる。 レオナールはズカズカと部屋に入り込むと、エマの腕を乱暴に掴んだ。 「ッ、ぃたッ……ッ」 「レオナール様、跡が残りますので、お気を付け下さい」 「チッ!」 従者が止めると、ようやくエマの腕を離す。 かわりに、エマの髪を掴むと、ギリギリと引っ張った。 「ぅぅッ、で、殿下ッ……」 「この薄汚いドブネズミがッ!」 レオナールは怒りの形相でエマを睨みつける。 エマは痛みに顔を歪めながら、何とか口を開いた。 「も、申し訳、ございませんッ」 「謝って済むと思うのか!?」 「殿下……申し訳ございません……ッ」 それ以外の言葉を口にすれば、さらに怒りを煽るだけだ。 レオナールは始めから、エマを許すつもりなど無いのだから。 「ぅぅ……っ」 エマが痛みに耐えている間に、従者がナタリナを部屋から追い出した。 バタン、と音を立てて扉が閉まる。 この部屋に、レオナールと従者、そしてエマだけになってしまった。 (あぁ……また、王子に折檻されるんだ……) 絶望で目の前が真っ暗になる。 逃げ出したいのに、どこへも逃げられない。せめて、レオナールの機嫌を損ねないように、言葉を選ぶだけだ。 そんなエマを、レオナールは激しく問い詰める。 「アイツに何をねだった? 金か? 宝石か?」 「そ、そのようなことはッ……しておりませんっ。庭園を、案内しただけですっ」 「嘘をつくな! オレの目を盗んで逢い引きしていたのだろう!?」 「そんなッ……私は、殿下の婚約者ですッ。他の方と逢い引きなど……ッ」 「黙れッ! 卑しい平民の分際で、婚約者を(あの俗物な性格を考えれば、第二王子で間違いないだろう) ルシアンはそう確信していた。 だが、あの無能なレオナールが悪事を主導しているとは考えにくい。レオナールの立場と権力を利用し、裏で悪事を働いている者がいるはずだ。 「うまく捕らえて、君の反抗勢力も一掃しなければな」 ルシアンはうっすらと笑った。 黒幕が帝国の貴族と通じていた証拠を押さえ、ティエリーの基盤を強固にすることが、今回の最終的な目的だ。ついでに、ランダリエのサファイア原石をティエリーが抑えれば、軍部での影響力を強めることができる。 そのために、わざわざこんな小国までやってきて、秘密裏に動いているのだ。 (予想外のこともあったが……) ルシアンはグッと拳を握る。 任務の為に近づいた、可憐な白い花。 それなのに、ルシアンは本気で、あの花が欲しくなってしまった。 「ルシアン」 「なんだ」 「聖樹から、情報を引き出したのだろう?」 「ああ。……あの男の代わりに、執務を行っているようだ」 エマから直接聞いたわけではないが、レオナールが仕事を押しつけていることは明白だ。 「さすがだな、ルシアン」 ティエリーは軽く口笛を吹き、楽しげに言った。 「あの聖樹は、使えるな」 「書類は把握しているようだから、情報ならまだ聞き出せるだろう」 「いや、物証を盗ませるのにちょうど良い」 「!?」 ルシアンは思わず顔を上げた。 ティエリーは口端を上げて、ルシアンに命令する。 「ルシアン。お前が、あの聖樹を番(つがい)にしろ」 「ッ、できるわけないだろう!? 王子の婚約者だぞ!」 「まだ番っていないのだろう? お前が先に番にしてしまえばいい」 「戦の火種を投げ込むつもりか?」 ルシアンは険しい顔でティエリーを咎める。 ティエリーはグラスを揺らしながら、愉しげに笑った。 「この国では聖樹と崇めている
ティエリーは悪びれた様子もなく、テーブルを挟んだ向かい側の椅子に腰掛ける。 「報告書を読んでたのか?」 「ああ」 「それにしては、上の空だったようだが?」 ティエリーは笑いながら、ルシアンを見る。 テーブルに用意されていたグラスにワインを注ぎ、勝手に飲み始めた。 「で、その地味な袋は何だ?」 「野暮なことを聞くな」 ルシアンは素っ気なく答え、お守り袋を懐にしまいこむ。 「あの聖樹からもらったのか」 ティエリーが興味を示すが、ルシアンは黙っていた。 無視したのに、ティリーは興味深そうに尋ねてくる。 「何をもらったんだ? 手紙か?」 見せろ、と手を差し出すティエリーを、軽く睨む。 ルシアンが頑なに拒むのを見て、ティエリーは肩をすくめた。 「そんな顔で睨むな」 「……何か用があったんじゃないのか」 ルシアンが不機嫌な顔で尋ねると、ティエリーは楽しげな顔になった。 「なに、お前が王子と揉めたと聞いてな」 「その件は、すでに処理したはずだ」 「報告は聞いている。バカバカしい主張だったそうだな。尊い聖樹を、一介の貴族が案内に使うのは、冒涜だとか何とか」 ティエリーの言葉に、ルシアンは冷ややかに答えた。 「こじつけも良いところだ。王太子には話を通しているというのに、恥知らずにも抗議してくるのだからな」 「主人が無能なら、部下も無能か。さすが、ランダリエの問題児だ」 嘲笑を浮かべるティエリーに、ルシアンは苛立ちを含んだ声で答えた。 「ランダリエ王家も、あのような恥晒しをよく表に出せたものだ」 ルシアンは、ティエリーの前だからこそ、容赦なくレオナールを批判した。 「上位の者に媚び、下の者には横柄にふるまう。俗物な小物だぞ、あれは。王族の権威に増長し、自惚れが強い……君の名を出して、ようやく静かになったくらいだ」 奥庭園で会った時、レオナールは明らかにルシア
杭が蕾の内側をかき回し、半身が痺れるような痛みに包まれる。視界が滲み、意識が遠のいてきた。 (あぁぁっ……楽に、なりたいっ) その一心で、エマは喉を震わせながら、レオナールの望む言葉を絞り出した。 「ッ……ぃ、卑しい私に、慈悲を賜る殿下に……ふ、服従と、……忠誠を、誓います……っ」 エマは羞恥と絶望に涙をこぼす。 レオナールは満足げな笑みを浮かべ、嘲るように言い放った。 「愚鈍なメス犬も、ようやくまともに物を言えるようになったか」 「腰を振りながら忠誠を誓うとは、実に浅ましい」 「卑しい平民なのだ。仕方あるまい」 レオナールが顎で合図を送ると、控えていた従者が声をひそめる。 「お外ししても、よろしいのですか?」 「ああ。玩具とはいえ、壊れてしまっては困るからな」 レオナールは酒杯をあおり、愉悦に染まった目でエマを見下ろす。 エマはレオナールの婚約者であるため、定期的に宮廷医の診察を受けている。万が一、外傷や性的な損傷が見つかれば、責任を問われるのはレオナールだ。 (ぁ……い、イかせて……もらえる……の……?) 催淫香に思考を溶かされたまま、エマは断片的な会話を拾い上げ、無意識に躰を震わせる。 だが、すぐにレオナールの残酷な笑い声が耳を貫いた。 「躾には、適度な褒美がいるのだろう?」 「はい、レオナール様」 「ならば、誰が主人か、骨の髄まで思い知らせてやれ」 「かしこまりました。では、一度解放した後に、また縛って躾を続けましょう」 従者が舌なめずりするような声で、醜悪に笑う。 「ッ……ぃ、ィャっ……!」 エマは怯え、首を振った。 だが蕾は杭に貫かれたままで、逃げ場などない。 エマにできるのは、絶望に涙することだけだった。 +++ &n
「メス犬の分際で、仕置きを拒むとは何様のつもりだ!」 「うぅッ」 「それとも、お前の侍女に代わりをさせるか?」 脅しの声に、喉がひくりと鳴る。 (ダメッ! ナタリナは……!) エマは観念したようにギュッと目をつむる。 そして、自ら杭に向かって腰を下ろした。 「ッ、ぁ、ひぁぁぁぁぁーーッ!!」 杭の先端が、蕾の入り口を割った。 体の重さで一気に奥まで貫かれ、衝撃にのけぞる。 「ぁ、……ぐッ、……ぁぅ……ッ」 エマは息もできず、ガクリと崩れ落ちそうになる。 蕾を貫く杭は、思ったより柔らかい感触だったが、半身を戒められているせいで、酷い苦痛をもたらした。 「アァァッ……いたぃッ……ぁぅぅッ」 蕾は杭を飲み込み、悦ぶように締めつける。 同時に、戒められた半身に痛みが走り、苦痛が迸った。 (苦しいッ……いたい、のに……ぁ、なか、熱いぃっ!) 「はぁぁんッ……ァァッ、ぅぅ、くぁッ……んぁぁ、ァッ」 果てることができないのに、甘ったるい匂いが躰を煽ってくる。 エマは快楽を求めて、無意識に腰を動かした。 「ぁんっ、はぁぁッ……ぁぁんっ!」 縛られた両手で、シーツの上に手をつく。膝で体を支えながら、腰を上下に揺らし始める。 「ぁぁんッ……んぅっ、ぁ、はぁぁんっ……ッ」 いやらしい水音が室内に響き、羞恥で涙がにじむ。 それでも、快楽には抗えず、エマは夢中で杭を咥え込んだ。 「ハハッ! 見ろ! 嫌がる素振りをしておきながら、この有様だ。自分で腰を振って悦んでるぞ」 レオナールがゲラゲラと笑いながら、エマを揶揄する。 「ええ、レオナール様。まさに盛りのついたメス犬です」 従者も、嘲るようにエマを貶めた。 男たちの嘲笑に、エマは何も言い返せずに俯く。 (ぅぅ……こんなッ……ひどい……っ)
「私は……んっ、ぃ、卑しいメス犬です……欲をかいた罪を、どうか……ぁんっ、っ、はぁ……お、おゆるし下さいっ」 「ハハッ! 従順になってきたな」 「催淫香がよく効いているようです」 従者は嫌らしく笑い、エマの右腕を掴んだまま、細長い布を見せつける。 「お前のような尻軽のメス犬は、すぐ勃起して、下品によだれを垂らす」 「ッ……はぁんッ」 従者の嘲るような声に、エマは顔を背けた。 「穴を弄りながら浅ましく腰を振るとは……それがレオナール様へ詫びる態度か?」 「ぁ、ッ、そんな……ちがっ……」 エマは首を振るが、躰が勝手に疼き、蕾をいじる手を止めることができない。 昂ぶりは先端から蜜をもらして、ヒクヒクと震えている。 早くイきたいと、絶頂への刺激を待っているのだ。 「いいか、メス犬。お前の犯した罪は重い。レオナール様のご命令があるまで、勝手にイクことは許さん」 「ぇ……ぁ、アァッ!」 従者はエマの左手を掴み、蕾から指を引き離すと、強引に両手を一纏めにした。 細い布に手首を縛られて、自由を奪われる。 「次は、こっちか」 「ッ!?」 従者が、下卑た笑みを浮かべて、エマの股間を見下ろした。 (ッ……まさかっ!) エマは何をされるのか察し、脚を閉じようとした。が、すぐに従者の手によって、大きく開かれる。 「ぃ、いやぁぁッ、やめて……あぁぁッ!」 逃れようとしたが、無駄な抵抗だった。 従者は新しい布で、エマの小さな双玉と雄を包み、きつく二重に巻いて縛った。 「ぁぅッ……ッ」 グッと締め上げられた瞬間、熱がせき止められ、逆流するような感覚に襲われる。 「ちっ。汚らわしい汁がついてしまった」 従者は不快そうに両手を見下ろし、ハンカチで丁寧に手を拭った。 エマを汚らわしい存在だと見せつける行為に、心を傷つけられる。 「おい。アレを持ってきたんだろう?」
エマは命じられたとおりに服を全て脱ぐと、ベッドの上に座り込んだ。 レオナールはいつものように、一人がけの豪奢な椅子に腰掛けている。 エマは羞恥に耐えながら、レオナールに向かって、両足を開き、萎えた自身に手を添えた。 「貧弱な身体は見るに堪えんな」 「ッ……」 「玩具なら、もっとオレを楽しませてみろ」 レオナールは酒を注いだ杯を片手に、ニヤニヤ笑いながらエマの痴態を見物しようとしている。蔑む眼差しから逃れるように、エマは視線を逸らして、半身を扱いた。 「ん……ぅっ」 思うように、躰が反応しない。 発情期でもないのに、大嫌いなレオナールの前で無理やりやらされて、感じるわけがないのだ。 (ルシアン様なら、蕾もすぐ濡れてしまうのにっ) 恋い慕うルシアンの手が触れてきたときのことを思い出すと、蕾が疼きだした。 「ぁんっ……ぁぁッ」 ぴくんと躰が跳ね、半身から蜜があふれる。 ルシアンを想うことで躰が反応する。そのことに、エマは安堵した。 しかし。 「……ッ、ぁ、……?」 (ぇ……なに、この匂い?) ふわっと甘い香りが漂ってきた。 その香りを嗅いでいると、なぜか躰が熱くなってくる。 「はぁッ……ん、んぁッ、ぁぁっ」 頭の芯が痺れていくような、甘ったるい匂い。 匂いの元を探ろうと視線を巡らせ、ベッド横の台に香炉を見つけた。 (これ……催淫香(さいいんこう)だッ) 以前にも使われたことのある、オメガの性欲を煽る香(こう)だった。 吸い込むと媚薬のような効果があり、躰の疼きを引き起こす。 なぜかオメガにしか効かない香りで、以前、躾と称してこの催淫香を使われたことがあった。 液体の媚薬ほど即効性はないが、胸焼けがするような甘さだ。 「んんっ、ぁ、……甘ぃ……んぁぁっ」 「匂いには敏感なようだな」 ベッドの脇にいた従者が、イヤらしい笑みを浮かべる。